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名古屋地方裁判所 昭和43年(ワ)442号 判決 1971年4月30日

原告

大場民男

代理人

大脇保彦

外四名

被告

トヨタ自動車工業株式会社

代理人

松坂佐一

外四名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は被告の昭和四三年一月二九日第五六回定時株主総会における「定款第一七条(役員の資格)取締役および監査役は日本国籍を有する者に限る。」を新設する旨の決議は無効であることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする。との判決を求め、請求の原因として次のとおり述べた。

一、原告は被告の株主である。

二、被告会社の昭和四三年一月二九日第五六回定時株主総会において「定款第一七条(役員の資格)取締役および監査役は日本国籍を有する者に限る。」を新設する旨の決議がなされた。

三、しかしながら右決議は憲法第一四条に違反し直ちに無効となるかあるいは民法第九〇条に違反し、また商法第二五四条第二項および第二八〇条に違反して無効である。

(一)  憲法第一四条は「すべて国民は法の下に平等であつて、人種……により経済的又は社会的関係において、差別されない。」旨規定しているが右にいう「すべて国民は」の中には外国人も含まれ、また「人種」の中には国籍という意味も含まれるものであつて、右憲法第一四条の趣旨は外国人も法の下に平等であつて、国籍により、経済的又は社会的関係において、差別されないという趣旨をも含むものと解すべきであり、このことは憲法前文の趣旨や世界人権宣言の規定を併せ考えれば明らかであり憲法第三章の各規定は外国人にも適用されるべきである。そうすると本件決議の内容は憲法第一四条に違反し無効というべきである。

(二)  仮りに憲法の諸規定は直接には私人間の法律関係には適用されないものと解せられるとしても、憲法第一四条の趣旨は民法第九〇条の公の秩序および善良の風俗の概念内容を構成するものであるから憲法第一四条に違反する私法上の行為は直ちに民法第九〇条の公序良俗に違反し無効であると解すべきである。即ち、株主総会における決議事項にはいわゆる私的自治の原則が働く領域であることは認められるが、私的自治の原則も絶対無制限のものではないことはもちろんであつて右決議の内容が法令に牴触する場合はその決議は無効である。そして私人の行為が基本的人権を侵害しているか否かはその具体的な法律関係の性質や制約の内容、程度等を綜合勘案して決すべきであるが、一般的にはそもそも人間性の尊重の原理と矛盾するような人権への制約につき合理的理由を欠くとみるべきであり、また民法第九〇条にいわゆる公の秩序、善良の風俗なる概念は国家、社会の一般的利益あるいは社会の一般的道徳観念を指すものであるから、私法上の行為が民法第九〇条の公序良俗に違反するかどうかの判断は一般的、社会的、普遍的な立場からなさるべきで本件決議の内容が公序良俗に違反するかどうかの判断にあたつても、被告会社の設立以来の独自性や社風ないし伝統が日本人の頭と腕で国産自動車工業を確立する、というものであるとしてもかようなことは全く考慮すべきではないところである。

(三)  本件決議において被告会社の取締役および監査役を日本国籍を有するものに限る旨を被告会社の定款に加えたのは、専ら株主の利益の犠牲のもとに資本自由化対策として経営者の地位の安泰をはかるものであつて外国人に対する不合理な差別として民法第九〇条に違反し無効なものである。即ち、日本は昭和三九年一月にいわゆるIMF第八条国となり国際収支上の理由を以つて為替制限、国際間の資金の移動に制限をつけないこととし、更に同年四月OECD(経済協力開発機構)に正式加盟して資本自由化契約を承認した。これは国際経済社会の相互依存性の増大に伴つて国際間の経済協力関係の推進が各国経済ひいては世界経済全体の発展に貢献し、もつて世界の諸国民の間の平和的且つ協調的な関係に寄与することを確信し我が国もその一員として各国経済との間に緊密な協力関係をつくり資本の移動についても自由化拡大の努力を払うことが日本経済の長期発展のために必要であると自ら判断したからにほかならない。

そしてその後日本は真剣に資本自由化推進問題に取組み、昭和四二年六月六日政府は自由化を進めるに当りとるべき対策および当面の自由化措置等について閣議決定をなし、また経済団体連合会も政府の右資本自由化推進政策に協力し、外資問題委員会等を結成する等資本自由化につき前向きに取組み、いわば政界財界一致し、国策として資本自由化の促進をはかつてきたのであり、しかも技術革新、企業の合理化、大型化は時代の要請であつて外資導入なしには技術革新も望みえないのが現下の世界的経済情勢である。従つて我国が国際社会の一員として国際社会において信望を高めるにはこうした国際情勢の正しい把握のもとに合理的な行動をとるべきで資本自由化は日本経済自らの脱皮のため課題であるというべきである。しかるに被告会社は右の国策に反し資本自由化に対する防衛手段として本件決議をなしたもので右は合理的理由なく外国人に対し差別的取扱をするもので公序良俗に反するものというべきである。

四、しかも本件決議の内容は商法第二五四条第二項および第二八〇条にも違反し無効である。商法第二五四条第二項は、その文理上は取締役の資格を株主に限定しえない旨規定しているに過ぎないけれども、右規定の趣旨は取締役会が専制的な業務運営機関であることを考慮し、株主に対しその投下資本が合理的に運営されることを保障するため取締役の選任の範囲をできるだけ広くしようとするところにあるから、広く不合理な取締役の資格制限を禁止しているものと解すべきである。しかるに被告会社は前記の現在おかれている経済情勢とこの情勢からして将来自動車工業において国内市場が従来と異なり海外企業との対等な競争の場となることは避け難く、こうした事態に対して被告会社の経営担当者特に取締役は従来にも増して新技術の開発、優秀な労働力と資本の確保、商品価格の引下げに努め外資と対等の条件にて競争できる基盤を形成、発展させる必要があり、このためには従来以上に国内的事情にとどまらず世界経済情勢に精通し国際的感覚を有する一層有能な人材を取締役に求める必要がある。しかるに本件決議は右の諸要請を無視し、従来被告会社定款には取締役の資格について何等の制限規定がなく被告会社会社株主は無限の人的範囲から最適任のものを自由に選任しえたのに、選任範囲を日本国籍を有するものという極めて狭い人的範囲に限定したものであつて、本件決議は不合理な取締役の資格制限であつて商法第二五四条第二項に違反し無効たるを免れない。更に監査役の資格制限についても、商法第二八〇条は同法第二五四条第二項を準用しており監査役が株式会社の主たる会社監査機関として株主の利益保護に重大な関係のある現在取締役の場合と同様に考えなければならず、本件決議はこの点において商法第二八〇条、第二五四条第二項に違反し無効たるを免れない。

原告は被告の本案前の抗弁に対し次のとおり述べた。

一、商法第二五二条の訴の性質は形成の訴であるから確認の利益を問題とする余地はない。株式会社法上の瑕疵に関する訴は、過去においては全て無効確認の訴と把握されて来たが、例えば設立無効の訴、株主総会決議取消の訴等にみる如く現在ではそのほとんどが法文上も形成の訴として認められるに至つており、この傾向はこれらの訴が本質的にその判決の効果を当事者以外の第三者に対し画一的に及ぼす必要性を内包しているとともに、団体法上の行為には確定判決のあるまでは既成の瑕疵行為の外形的効力を尊重しようとする既成事実の尊重の原則があるからにほかならない。そうすると会社法上の訴のうちひとり商法第二五二条の訴のみを無効確認の訴と考えることは同条の訴の判決に対世的効力が明文上認められ、設立無効の訴や決議取消の訴と軌を一にする点から推して極めて不自然であり商法第二五二条の訴もまた形成の訴として理解しなければならない。

二、仮に商法第二五二条の訴の性質が確認の訴であるとしても原告は本件訴につき確認の利益を有する。株主総会決議無効確認の訴において確認の利益が必要であるのは決議の効力を会社自体あるいは取締役、株主等以外の第三者が当該決議の効力を無制限に争いうる可能性を作ることに対する弊害を排除するためであり、株主総会決議無効確認の訴が当該会社の構成員たる株主により提起された場合には本来確認の利益、特に主体的利益を問題にする余地はなく、原告が被告会社の株主であること前記のとおりであるから本件決議の無効確認につき原告は当然確認の主体的利益を有していることが明白である。更に原告は本件決議により被告会社株主総会において現に日本国籍を有するもの以外のものを取締役、監査役に選任する投票の自由を失つておりこれは明白な株主権に対する制限ないしは危害であつて本件決議が直接に会社と株主との間の権利関係を確定したものではなくとも、右決議は株主を拘束しこれに服従せしめこれを無視しえざる法律上の効力を有するものである以上、たとえ原告自身は外国人ではなく、あるいは被告会社において当面外国人取締役、監査役の選任ないし就任をめぐる具体的紛争がなくとも原告には本件決議の無効確認を求めるにつきその客体的利益をも有しているものといわなければならない。

三、この点につき被告は本件決議による被告会社の取締役、監査役の資格制限は株主総会における選任の際の要件ではなくして被告会社と被選任者との間の就任契約の要件たるにとどまるから本件決議は原告の右役員選任者を何んら制限するものではない旨主張するが、右選任の要件と就任の要件とを区別するのは被選任者をしてその意思を無視して重大な義務と責任を負う地位につかしめるのは妥当でないとの考慮より出でたものであるに過ぎないものであつて、現行商法上は取締役、監査役の選任権は株主総会が有しているのであるから、被告の右主張はそれ自体失当というべきである。

被告は本案に先立ち、本件訴を却下する。訴訟費用は原告の負担とする。との判決を求め、本案前の抗弁として

一、原告の本訴請求は商法第二五二条のいわゆる株主総会決議無効確認の訴であるが商法第二五二条の訴の性質は確認訴訟と解すべきであるところ原告には本訴請求につき確認の利益を欠いているものである。即ち、

(一)  商法第二五二条の訴には株主総会決議取消の訴に関し規定している同法第二四七条、第二四八条の如く提訴権者、提訴期間の定めはなく、従つて何人も何時でもいかなる形式においても訴の存する限り同法第二五二条の訴を提起しうるものと解せられ、また同条は同法第一〇九条の規定を準用して株主総会決議無効判決にいわゆる対世的効力を認めているが、これとて右判決の性質を一般の確認判決であると解すべき妨げとはならない。蓋し通常形成判決には成文上あるいは解釈上対世的効力があるものとされているがこのことから逆に訴訟当事者以外の者に判決の効力が及ぶ場合をとらえて直ちにその判決を形成判決であるとすることはできず、株主総会決議無効判決が対世的効力を有するのは単に当該判決の既判力を拡張した一場合であつて、法が特にその必要ありとする場合には確認判決にもなおその既判力の人的範囲を拡張することのあるのは破産法第二五〇条、会社更生法第一五四条等にもその例をみるところである。従つて商法第二五二条の訴に同法第一〇九条が準用されることの故を以つてこれを形成の訴と解することはできない。

(二)  形成の訴とは一定の法律要件に基づく法律状態の変動を主張する語であつて、この訴は特に訴を以つて裁判所に権利関係の変更を請求することができる旨規定されている場合に限つて認められる特殊なものである。そして商法第二五二条の訴を以つて形成の訴であるとすれば前記のとおり提訴権者、提訴期間についての規定が全くないこと、明白な公序良俗違反、強行法規違反の決議や株式会社の本質に反する決議の如く当然無効な株主総会決議も無効判決が確定するまでは一応有効なものとして取り扱わねばならないという不合理を招来することになる。

(三)  以上のとおりで商法第二五二条に規定する株主総会決議無効確認の訴は形成訴訟ではなく確認訴訟であると解すべきである。

(四)  そして確認の訴を提起するには確認の利益を有しなければならないところ、原告は本訴を提訴するにつき何んら確認の利益を有しない。即ち、(1)原告は被告会社の株主ではあるが株主であることから当然に確認の利益を有するものということはできず、確認の利益は原告に即時確定の利益が存するか否かを個別的具体的に判断せざるをえないものである。(2)而して原告は日本国籍を有するもので外国人ではないから本件決議によつて原告自身が現在および将来にわたり被告会社の取締役、監査役(以下単に役員という。)に選任されこれに就任するにつき何らの制限や障害を受けることはなく、(3)また本件決議により原告の株主権を喪失せしめたりその利益配当請求権に直接影響を及ぼしたりする危険は全くなく、原告の株主権につき現在および将来とも何らの危害、損失を及ぼすものではない。(4)更に被告会社においては現在外国人役員は一人もおらないし、また外国人の役員就任につき何らの動きもなく被告会社株主も外国人の役員候補者に対し投票権を行使した事実もなく、要するに被告会社において外国人役員選任につき現在何んらの具体的紛争も存在しないのである。(5)しかのみならず一般に株主総会における被選任者を役員に就任せしめるには、会社と被選任者との間で任用契約を締結することが必要であると解せられ、右任用契約は株主総会における選任決議に基づいて会社の代表機関が就任の申込をなし被選任者がこれに承諾を与えることによつて成立するものであり、株主総会における役員の選任と被選任者の役員就任とは明確に区別されるべきことであつて役員資格に対する制限は株主総会における右選任の要件ではなくして単に役員就任の要件であるに止まるものと解せられるから、本件決議がなされたからといつて原告が被告会社株主総会に出席し、外国人を被告会社役員として選任すべく、有効な投票をなすにつき何らの障害もないから本件決議は原告の株主権行使に対し何らの制約を加えているものではない。(6)要するに原告の本件訴訟は具体的な紛争即ち法律上の争訟を離れて抽象的に、会社の自治法規たる定款の規定が憲法、法律に適合するか否かの判断、法解釈を裁判所に求めるものであつて、かような訴訟形態が民事訴訟法上全く認容されないものであることは抽象的な法律、地方公共団体の条例の規定等が単に憲反するかどうかの解釈を裁判所に求める訴訟が許容されないのと根本的に同一である。

二、仮りに商法第二五二条の訴の性質が形成訴訟であると解せられるとしても、原告は本件訴訟につき訴の利益を有しない。即ち形成訴訟においてもやはり訴の利益ないし権利保護の利益が必要なことは当然であつてこの点において提訴資格の主体的および客体的範囲は限定されるものであるから、少くとも提訴資格に関する限り右確認訴訟と解した場合と同様な結果に帰し、前記のとおり確認の利益を有しえない原告は本訴を形成訴訟と解したところで訴の利益ないし権利保護の利益を有せざるに帰一するものといわなければならない。

と述べ、本案につき原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。との判決を求め、答弁として請求の原因たる事実一、二の各点を認め、三の点を争い、そもそも憲決第一四条は第一項において「すべて国民は法の下に平等であつて……」と規定しているが右にいう「すべて国民は」とはすべての日本国民を意味し、外国人は含まれないと解すべきである。即ち現在の世界が国家という単位をその法体制の基礎としている以上ある程度の差別が外国人に認められるのは已むを得ないことであつて本条はもつぱら日本国民についての定めであり、また同条同項後段は「人種」を挙示しているが「国籍」を挙示していない点からも右の如く解すべきであり、人種とは人間の人類学的な種類を意味し国籍とは国家の所属員たる資格を言うものであつて右両者を同一に解することはできない。と述べ、被告の主張として、

一、本件決議は憲法第一四条第一項に何んら違反するものではない。

(一)  憲法第一四条第一項にいわゆる「すべて国民」とはすべての日本国民を意味し外国人は含まれないものと解すべきである。(1)日本国憲法は一般に外国人に対しても適用される規定については「何人も」と表現しているのが常であるが、憲法第一四条第一項は「すべて国民は……」と規定しているところから本条項による保障の対象は日本国民に限られると解すべきである。(2)そして日本国憲法の前身ともいうべきマッカーサー草案第一六条には「外国人は法の平等な保護を受ける権利を有する。」旨規定せられていたがこれは憲法改正草綱により削除せられ、さらに右草案第一三条は「すべての自然人は、法律の前に平等である。」と定められていたが、現行憲法はこれを改めたのである。かような日本国憲法の成立過程からみると、右原案においては意識的に外国人の法の下の平等について規定していたものを、日本国憲法は逆にこれを否定し意識的にその対象を日本国民に限定しようとしたものと理解せられ、現在の世界が国家という単位をその法体制の基礎としている以上、ある程度の差別が外国人にみとめられるのはやむをえない場合があるので憲法第一四条はもつぱら日本国民について定めることにしたものと解せられる。(3)而して、もし憲法第一四条第一項にいわゆる国民のなかに外国人も含まれると解すると、その結果外国人は政治的関係においても差別されないことになりこれは事実に反するのみならず、同条項は「人種」を挙示しているのに国籍は挙示しておらず、ここに人種とは人間の人類学的種類をいい国籍とは国家の所属員としての資格を意味するものであつて右両概念は明確に区別せられているのであるから国籍による差別は同条項の関知しないところというべきである。

(二)  仮りに憲法第一四条の趣旨が外国人に類推適用されるとしても同条項のいわゆる法の下の平等は各人は絶対的に無差別に取扱うべきことを意味するものではなく、各人には経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異が存するのであるから、法規の制定またはその適用の面において右のような事実関係上の差異から生ずる不均等が各人の間にあることは免れ難いところであり、その不均等が一般社会観念上合理的な根拠に基づき必要と認められるものである場合には、これをもつて憲法第一四条の法の下の平等の原則に反するものとはいえず、むしろ絶対的な平等を要求することは不可能であるのみならず単なる機械的な平等の扱いは無意味であり有害でさえある。このことは外国人に対し公務員の選定、罷免権のような参政権の保障が与えられていないこと、その他国家、公共の利益の見地から種々の制限、例えば外国人の出入国、在留の要件、職業選択の自由、財産権に対する権利能力などについての種々の制限が設けられていることからも明らかである。以上のとおり憲法第一四条は合理的な差別は禁止していないところであつて本件決議による外国人に対する役員資格の制限も右の合理的な理由にもとづき必要と認められる差別であつて何んら右条項に違反するものではない。

(三)  なおまた仮りに憲法第一四条の趣旨が外国人に類推適用されるものとしても、本件決議のごときいわゆる私人間の行為には右条項はその本質上直接に適用されないものである。近代法秩序は公法と私法との二元的構造を前提としているものであつて、憲法の人権保障規定は歴史的にも理論的にも国家の国民に対する保障としての性質をもつものであるから、憲法の人権保障規定が民法第九〇条等の私法法規を通じて私人間の行為を規律することがあつても本件決議の如きいわゆる私人間の法律行為に憲法第一四条が直接に適用せられることはありえない。

二、次ぎに、本件決議は何んら民法第九〇条に違反するものではない。

(一)  本件決議は他の株主総会決議とその性質を同じくし株式会社における私的自治の原則、特に定款自治の支配する領域の問題であつて、そこに手続的な瑕疵あるいはその内容上の法令違反のない限りいかなる決議をなすも本来株主総会の自由に委ねられているところである。そして民法第九〇条にいわゆる公の秩序または善良の風俗に反する行為は無効とする旨の規定の趣旨は要するに社会的妥当性を標準としてこれに反する行為の私法上の効力を否定する旨を明らかにしたものであつて、憲法第一四条に違反する行為であることを以つて直ちに民法第九〇条の公序良俗に違反するものとは断じ難く、同条に違反するかどうかは専ら社会的妥当性を欠くかどうかにより判断せらるべき事柄である。而して本件決議の内容たる外国人に対する被告会社役員資格の制限は現在の被告会社をとりまく日本国内の社会経済的情勢と国際的諸情勢および被告会社の独自性を併せ考えると、被告会社にとつて必要にして不可欠の要請であつて決して右の社会的妥当性を欠くものではない。即ち本件決議の内容たる外国人に対する役員資格の制限は憲法の保障する人権のうちでいわゆる経済的自由権の類型に属する職業選択の自由ないし権利に対する制限であつて、この種の人権は本来合理的根拠があれば制限を加えうる性質のものであり、しかも現在の世界が国家という単位をその法体制の基礎としおのおのその国民経済を単位として世界経済が動いていることを前提となしている以上外国人に対しある程度の差別的取扱をすることも合理的根拠があるものというべきである。そして現実にまず国家自身による内外人の差別的取扱例は別表Ⅰのとおり枚挙にいとまがなく、また一般に広く知られている私人による内外差別例も別表Ⅱのとおり数多く存在し、更にアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ等の諸国においても外国人の会社取締役等の資格に対し制限規定を置いている多数の例が存するのであつて、これらはいずれも社会的妥当性を有するものとして一般に承認されているところである。

(二)  また本件決議を評価するに当つては本件決議をなすに至つた被告会社の独自性を考慮に容れなければならない。被告会社は日本人の頭と腕で国産自動車工業を確立するという目的のもとに設立せられ、したがつてその創業時においても外国技術の導入をせず、社内において創意と工夫による研鑚を重ねるとともに国内専門家等の教示を得る一方、社外の経験者を多数集めて日本人の手による自動車製造を信念としてきたものであり、この経営方針は現在も脈々として受け継がれているものであつて、かような日本人の技術によつて自動車を製造するには被告会社自体もまた日本人によつて運営される必要がある。そしていわゆる資本自由化が実施され外国の会社が進出してきた場合、その会社は技術を本国において集中的に開発し、その成果のみを進出先の国内で使用することになり、その結果進出先の国内の技術水準の向上には一時的に役立つことはあつても長期的にはかえつてマイナスになるとともに、外国資本の支配下におかれた企業はその外国資本全体としての利益を最大にするための一部門として位置ずけられ、その国の国民経済上の利益をもあえて犠牲にして行動しなければならなくなるのが一般であつて、国産自動車工業を確立するためには、資本的にも技術的にも外国の支配下に入らないことが条件となるのである。このことは被告会社設立趣意書および原始定款第九条の規定からも明らかである。それゆえ被告会社の経営方針および社風も右創業以来の方針と伝統を承継し、昭和二七年当時他の国内自動車会社のうちには敗戦の空白によつて立ち遅れた設備機械や技術を世界的水準にまで引き上げるべく外国企業との技術提携を行ない外国自動車会社の設計、技術に依存して自動車製造を行つたものがあつたのに、被告会社は企業経営における自主独立の精神を再確認しあえて外国自動車会社との技術提携の道を選ばなかつたもので、以来被告会社は国産の国民車の開発と完成に取組んでいるものである。本件決議も以上の被告会社の独自性の現れの一端であつて、しかも被告会社の定時株主総会において被告会社発行済株式総数七億六五〇〇万株のうち本件決議に反対した株主の株式総数は僅か一万三、一〇〇株(その割合は0.0017パーセント)にすぎない圧倒的多数の賛成を得て決議されたものであつて、決して被告会社株主の利益を犠牲にして経営者の地位の安泰をはかるものなどということはありえないところである。

(三)  本件決議は以下に述べるとおりいわゆる資本自由化を中心とする現在の国際的、国家的、社会的諸環境の下においてこれに対処するため被告会社にとつて必要にして不可決の要請にもとづくものであつて十分に社会的妥当性を有しているものである。(1)第二次大戦後国際協調を重視した自由で多角的な世界経済体制を確立するため、いわゆる資本の自由化が世界の大勢として認められるに至つたが、現実の世界は依然として国家が単位であつて各国がそれぞれ自国の国民経済を守るという立場からそれぞれ独自性をもつて右自由化に対処しているところであり、世界最強の経済力をもち今後も世界経済の中心となるべき米国においてさえ、米国製品の優先買付けを義務づけるバイ・アメリカン法、米国産業が被害を受けるおそれのある時特に税金を賦課するアンチ・ダンピング法、課税価格の評価を輸出価格または輸出国の国内価格のいずれか高い方を採用する関税法第四〇二A条、輸入関税の課税標準に米国製品の卸売価格を採用できるASP制度等各種の非関税障壁、輸入制限立法などにより自国の産業を保護するため外国に対する差別的取扱を設けているのが現状であるから、資本の自由化といえども各国はまず自国の利益を擁護し、自国の利益につながる面において資本の自由化をすすめるのは当然のことである。(2)かような資本の自由化が実施せられた場合これに対する国内的体制が整つていないと、外国企業の進出により国内企業が市場占拠率を失い、さらには経営困難に陥つて国内企業は淘汰されてしまう危険も生ずるし、外国企業の私的な独自の意思決定によつてその国の産業構造が影響を受けあるいは景気安定のための設備投資の調整など経済政策がそれにより攪乱される危険も大きく、更に現在研究費の半分以上を国から支給される有利な条件をもつ米国は技術開発はすべて米国で行われ他国の技術水準の低下は免れないのみか巨大な外国企業が進出しその技術独占を主張して産業を独占するとその弊害は計り知れないものがあるのであつて、こうした結果は国民経済にとつて取り返しのつかない事態を生ずることになる。(3)ところで外国自動車会社は現在残されている最大の市場たる日本への進出をめざし着々とその準備をととのえているのである。昭和四二年一二月一二日、一三日の両日東京で開催された日米両国間で自動車工業の資本自由化問題を交渉するための日米自動車会議では具体的な取り決めこそ成立しなかつたものの今後右両国で交渉を続け日本自動車会社としても右問題について前向きに努力することを約束させられ、また昭和四三年一月二六日日米両国政府間で貿易経済問題を協議する日米貿易経済合同委員会が開催されたが、この席上で米国政府は日本に対し自動車工業の資本自由化を強く要求してきたのであつて、このことは米国が対日輸入制限問題とからませて強い圧力をかけてきたことを示すものである。そしてその後も米国はガット協議への上程をも辞せずとの強い圧力をかけてきたため日本政府は昭和四三年五月三一日、エンジン輸入ワクの拡大、関税引下げ、大型中古車の自由化の三措置を米国に提示したが米国はこれを不十分としさらに米国資本受入れの具体的方策を示すよう要求してきた等他の外国自動車会社ともあいまつて外国自動車資本の対日進出は切迫しているのである。(4)これに対し我が国においては昭和四二年六月六日の「資本自由化に関する当面の自由化措置」の閣議決定において外資に対し最も競争力のある業種から資本自由化を進める等のいわゆる段階的自由化の方針を明確にするとともにこれに先立ち政府から現行法の範囲内で資本自由化に伴う外資による経済の攪乱を防ぐための対策を求められた大蔵大臣の諮問機関である外資審議会の専門委員会は昭和四二年五月一七日「当面の自由化措置に伴い必要とされる対策」として、外国投資家の円貨による経営参加的株式取得等の規制、不公正な取引方法の規制、金融機関の持株制限の緩和、特許権者の独占に伴う弊害防止を「今後の自由化に伴い必要とされる対策」として定款による株式譲渡制限、定款による外国人役員選出制限、従業員持株制度をそれぞれ答申しているのである。そして日本政府はこれまでの数次に亘る日米自由化交渉の結果昭和四六年一〇月から自動車の自由化を実施する旨決定すると同時に昭和四四年一〇月一四日通産省発表「今後の自動車産業政策について」なるものを発表して自動車産業の国際競争力強化のために政府自身による自動車産業政策を公表している。(5)翻つて我が国の自動車産業は近年目覚しい発展を遂げ生産高、附加価値、従業員数等においては既に船舶工業、民生用電気機器工業、重電機器工業を抜き、機械工業中第一位の規模に達し、鉄鋼、電力、石油化学と並んで日本経済を支える重要基幹産業となつているとともに、最近輸出の伸びの鈍化した船舶、鉄鋼に替り自動車は今後最も有望な輸出商品としてその伸長が将来の日本の国際収支、経済発展に大きく寄与するものと期待されているところであつて、日本の自動車工業の動向は我が国の経済に影響するところ極めて大であるというべきであり、この中にあつて被告会社は日本経済全体の立場からして代表的かつ中核的企業として極めて重要な地位を占めているのである。しかるに我が国の自動車産業は未だその歴史が浅く、蓄積も少いため米国の自動車産業との間には比較にならぬほどの大きな格差があり、未だ我が国の自動車産業界の国際競争力は非常に弱いのが現状である。(6)かような国際的、国内的状況のもとにおいて日本政府は前記のとおり各種の自由化措置をとり、また外国資本については「外国為替および外国貿易管理法」「外資に関する法律」によつて日本の利益を守るための措置等をとるとともに、特に対内直接投資については、その影響が大きいため慎重に対処しており、前記のとおり外資審議会専門委員会の中にも定款による外国人役員の制限が含まれているところであつて、我が国の資本自由化は決して即時無制限のものではなく、自国の産業を保護しながらその長所をとり入れんとするいわば段階的自由化である。(7)かように現在の状況で被告会社も真剣に資本自由化対策に取り組み、経営の合理化による企業体質の強化、量産体制の確立と低価格化の実現、株式安定工作等あらゆる努力を積み重ねているものであつて、本件総会決議も前記段階的自由化政策に則り被告会社が外国人の手に乗取られ専ら外資の利益のため経営管理されることを阻止するため必要欠くべからざる要請にもとづいてなされたものであり、しかも前記外資審議会専門委員会は定款による外国人役員の選出制限につき、それを定款変更により行うに当つても、少なくとも外国投資家全体の持株比率が累積投票請求権が認められる発行済株式総数の四分の一未満であれば差支えないとしており、被告会社の本件総会決議当時の発行済株式総数は七億六、五〇〇万株でそのうち外国人持株数は一、五九一万三、四一二株であつて、その持株比率は2.08パーセントであるからこの点からしても本件決議は適法、有効である。

三、次ぎに請求の原因たる事実四の点を争い、本件総会決議は何んら商法第二五四条第二項および第二八〇条に違反するものではない。即ち、

(一)  商法第二五四条第二項は昭和二五年の商法改正により規定されたものであつて、これは一般に企業の所有と経営の分離の一つの現われとして説明されており、取締役の資格に株主たることを要件とすべきか否かという議論から生れたものであつて、それ以外に取締役の資格に他の要件を要求することが妥当であるか否かという議論から生れたものでないことが明らかである。そうすると右規定はその文言どおり単に定款を以つてしても取締役の資格を株主に限定しえない旨を定めるにとどまり、本件総会決議の如くそれ以外の理由による取締役資格の制限を禁止する旨を定めるものではないことはその立法の沿革と、右改正と併せていわゆる累積投票制度が採用されたことに徴し明白である。而して外国人を取締役に就任させることが企業としての適切にして円滑な経営方針の決定、結束の強化、その他営業活動の面で好ましくないと判断された場合に、これを取締役に就任させない旨を決議することはそれ自体何ら法的に非難されるべき筋合のものではなく、専ら株主総会の自治に委ねられるべき事柄であるというべきであり、またこの理は監査役についても同一である。

(二)  また仮に一般に不合理な取締役の資格制限が商法上禁止されるものとしても、本件総会決議は資本自由化の波がおし寄せている現在の状況で被告の下で被告会社が外資により乗取られることを防止せんがための必要かつ合理的な対策であり、ひいては被告会社の株主の利益にも合致するところであつて、企業の自主性の確保と株主の保護の見地から十分の合理性を有するものであることはこれまで詳述したとおりである。と述べた。

証拠<省略>

理由

一、(本件訴における原告の訴の利益)

請求の原因たる事実一、二の各点は当事者間に争いがない。而して原告の本訴請求が商法第二五二条に規定するいわゆる株主総会決議無効の訴であることはその請求自体よりして明らかであるから、まず本件訴につき原告にその訴の利益があるかどうかについて判断する。

(一)  まず商法第二五二条所定の株主総会決議無効の訴の法律上の性質についてみると、およそ株主総会決議についてその内容においてあるいはまたその成立に関する手続的過程において法令若しくは定数に違反する瑕疵の存する場合には、その瑕疵の性質、態様および程度等に応じて何んらか当該瑕疵ある決議の効力を攻撃しこれを是正することができるべきものとすることは当然の要請であるとともに、元来一般原則に従つてこれが許されて然るべきところであるが、他面において株主総会決議は会社の内部的関係においては株式会社における最高機関の会社運営に関する基本的事項についての意思決定たるの本質を有するものであるとともにその外部関係においては法人格の主体たる株式会社自身の意思形成たるものであり、ひと度株主総会決議がなされると、それに右の如き瑕疵があるかどうかにかかわりなく当該決議の存在を前提としてその上に数多くの社団法的あるいは取引法的な法律関係が形成発展させられるのが通常であるため、株主総会決議の効力如何は当該株式会社自身にとつてはもとより、株主、取締役等の会社構成員や更には会社債権者その他の第三者にとつてもその利害関係に多大な影響を及ぼすところであるから、株主総会決議が有効か無効かというが如き問題の解決に当つては株式会社の団体的性格からして法律関係の画一的確定と法的安定性の要請もまた充分に尊重しなくてはならないことも当然であるというべきところ、現行商法はこれらの諸要請をふまえたうえで株主総会の瑕疵につき、総会招集の手続又はその決議の方法が法令若くは定款に違反し又は著しく不公正なるとき、即ち株主総会決議の成立過程における手続的瑕疵と総会の決議の内容が法令又は定款に違反するとき、即ち決議自体の内容的瑕疵とに二分し、前者の手続的瑕疵については第二四七条において決議取消の訴を認め、後者の内容的瑕疵については第二五二条において決議無効確認の訴を認めそれぞれ右瑕疵の性質上の差異に応じて株主総会決議の効力につき別異に取扱うべきこととしているものと解せられる。

そして商法がかように右手続的瑕疵を決議取消原因とするにとどめ、右内容的瑕疵のみを以つて決議無効原因とする所以のものは、右手続的瑕疵にあつてはそれが決議の実体それ自身にかかわるものではないため右内容的瑕疵に比較してその重大性が少ないうえに、その性質上外部からは容易に認識し難く、更には日時の経過に伴ないその判別が困難になるものであるのに反し、右内容的瑕疵にあつては直接決議の実体にかかわるものであるためその瑕疵の程度は極めて重大であるのみならず、その性質上いかなる者からも何時にても容易に認識しうるところのものであつて、両者は等しく決議の瑕疵とはいつてもその間には瑕疵の性質態様および重大性等において自から質的な相違があることに着目したからに外ならないものと解せられるのである。そこで右手続的瑕疵を理由として株主総会決議の効力を攻撃するについては必ず商法第二四七条所定の右決議取消の訴を以つてなすことを要するとして、その提訴権者を株主又は取締役(清算人を含む)に法定するとともに(同条第一項)更にその出訴期間を当該決議の日より三月以内に制限することとし、(商法第二四八条第一項)、右決議取消の判決が確定するに至るまでは一応当該決議を有効なものとして取扱うとともに右出訴期間内に法定の提訴権者より適法な取消の訴が提起せられない場合は右瑕疵の治癒を認めて右手続的瑕疵を理由とする総会決議取消の主張を可及的に制限する旨の各規定を置き、以つて前記法的安定性の要請に重点を置くとともに、他方においてひと度総会決議を取消す旨の判決が確定した場合には単に訴訟当事者間のみならず広く第三者に対してもその判決の効力を及ぼすものとして前記法律関係の画一的確定の要請に答えているのである(商法第二四八条第二項、第一〇九条第一項)。これに対し右内容的瑕疵を理由に株主総会決議の効力を攻撃するについては商法第二五二条において決議無効確認の訴を規定し、その無効確認の確定判決については決議取消の判決と同様その効力を広く第三者に対しても及ぼすものとして同じく右法律関係の画一的確定の要請に応じるものとしているが(同法第二五二条、第一〇九条第一項)右決議取消の訴とは異なり必ず訴を以つて無効を主張すべき旨の規定をおいていないのみならず、右決議無効確認の訴についてもその提訴権者を法定せず、また出訴期間についても特段の制限規定をもうけていないところであつて、このことは右内容的瑕疵についてはその瑕疵の重大性の故に前記法的安定性の要請をある程度犠牲にしても何人の意思にもかからしめることなく当然に当該決議の効力は法的にこれを認めえないとの前提に立つているものと解せられるのである。

そうすると右内容的瑕疵のある株主総会決議は当然に無効であつて、当該決議の無効の主張は必ずしも訴を以つて主張することを要せず、例えば他の訴の前提問題として、即ち他の訴を理由付ける原因事由として、あるいはそれを排斥するための抗弁事由として主張したりすることもできるところであるものと解すべきであるが、もとより右無効の主張は他の訴訟の前提問題であつてそれ自体は訴訟上の請求(いわゆる訴訟物)を構成するものではなく、従つて右無効の主張に対する裁判所の判断も判決理由中の判断に過ぎないものであるから民事訴訟法第一九九条第一項の原則からして判断力を生ずるものではなく、従つて前記説示の株主総会決議の特質からして総会決議の有効無効をめぐる現在および将来の紛争を抜本的に解決するには不充分であるため商法第二五二条はひと度それが行われると会社その他の関係人においてあたかも適法な拘束力を有するかのように取扱われ勝ちな総会決議の無効の画一的確定をはからんとする者は何人でもまた何時にてもその確認の利益を有する限り株主総会決議無効確認の訴を提起しうるものとしたものであつて、その訴の性質は同法第二四七条所定の決議取消の訴とは異なり文字どおり確認の訴であると解するのが相当である。

商法第二五二条の訴訟の性質を無効を宣告する判決の確定によつて始めて当該決議の失効の効果が形成されるいわゆる形成訴訟であるとする原告の所論は第一に前記のとおり商法が株主総会決議の瑕疵の性質上の相違に従い決議取消の訴と決議無効確認の訴とを規定しそれぞれに応じてその取扱に差等をもうけ前記諸要請の調和をはからんとした趣旨を没却する点において、第二に株式会社における既成事実の尊重と法律関係の画一的確定の要請のみを重視するのあまり、明らかな強行法規違反の内容を有する決議といえども、それを無効とする確定判決がなければこれを有効として取扱わなければならないという極めて不当な帰結を承認しなければならないという点において、第三に商法第二五二条の明文にも背馳する点において、到底これに左袒することができず、なおまた商法第二五二条は商法第一〇九条第一項を準用し決議無効確認の判決にいわゆる対世的効力を認めているがこのことを以つてこれを確認訴訟と解するにつき何んらの妨げとなるものではない。なんとなれば通常いわゆる形成判決には明文上あるいは解釈上対世的効力が認められているのが一般であるといいうるがこのことから逆に対世的効力が認められるからといつてその判決の性質をすべて形成判決と解すべき理由とならないことは破産法第二五〇条、会社更生法第一五四条等の規定に徴し明らかであるとともに、右無効確認判決に対世的効力が認められるのは前記のとおり株式会社における法律関係の画一的確定の要請からするいわば政策的考慮より出でたものとみるべきものだからである。

(二)  そうすると商法第二五二条の総会決議無効確認の訴が適法であるがためには原告において当該決議の無効確認を訴求するにつき法律上の正当な利益を有しなければならないことは民事訴訟法の原則上当然であるから次にこの点について按ずると、

右総会決議無効確認の訴の前示の如き特質、とりわけ株主総会決議が一面その社団的内部関係においては会社の最高機関としての株主総会の会社運営に関する基本的事項についての意思決定たるの本質を有するものであるとともに、他面その法人的外部関係においては法人格の主体としての株式会社自身の意思決定たるの本質を有するものであり、右総会決議無効確認の訴が右の如き本質を有する株主総会決議の効力の無効を単に訴訟当事者間のみならず第三者に対する関係においても既判力を以て対世的に確定することを目的とするものである以上、当該株式会社の構成員(社員)として利益配当請求権等のいわゆる自益権のみならず議決権等のいわゆる共益権と称せられる諸々の権利ないし権限を有する株主および具体的な会社経営にたずさわる取締役、監査役等の会社役員は他に特段の事情のない限り、その地位からして当然にひとり自己の個人的利益のためのみではなく、会社企業自体の利益のためにもまた右総会決議無効確認の訴を提起する法律上の正当な利益を有するものと解するのが相当であるところ、これを本件についてみると前示当事者間に争いのない事実によると原告は被告会社の株主であり、また本訴で無効確認の対象とされているのは被告会社の昭和四三年一月二九日第五六回定時株主総会における「定款第一七条(役員の資格)取締役および監査役は日本国籍を有する者に限る。」を新設する旨の被告会社定款変更の株主総会決議であつて、また本件記録によれば原告が右決議を無効であるとして主張するところは要するに、右決議の内容それ自体被告会社の取締役、監査役の資格につき外国人を合理的な理由なく差別するものであるから憲法第一四条ないしは民法第九〇条に違反し、あるいは更に合理的な理由なくして被告会社の取締役、監査役の被選任者の範囲を制限するものであるから商法第二五四条第二項、第二八〇条に違反し違法無効である、というにあることも明らかである。

而して取締役および監査役の選任が株主総会の専決事項であることは商法第二五四条第一項、第二八〇条が強行的に保障しているところであり、株主総会における右取締役および監査役の選任決議はもとより各個の株主がその持株数に応じて有する議決権の行使を通じて行われるものであるから、被告会社取締役および監査役を日本国籍を有する者に限る旨の本件定款変更決議はもとより右取締役および監査役の資格を人的に制限するものであつてその選任権者の資格範囲を制限するものではないけれども、右総会決議が有効なものであるとすれば、それは被告会社の株主および取締役、監査役等を拘束する法的効力を有する結果、たとえ被告会社株主総会において日本国籍を有しない者を以つて取締役あるいは監査役に選任する旨の決議がなされたとしても、その選任決議は内容において右定款の規定に違反するところとなつて効力を生ずるに由なく(商法第二五二条)その結果ひいては右日本国籍を有しない者を以つて取締役ないしは監査役にすべく議決権を行使した株主も右定款が存するということの一事によつてその所期の目的を達しえざるに至るのであるから結局その議決の行使そのものも結果的に無効のものといわざるをえず、そうすると本件定款変更の総会決議は右の如き意味においていわゆる株主権の内容をなす原告を含む株主の右取締役および監査役の選任に関する議決権に対し直接に法的制約を課するものといわなければならない。もとより一般に株主総会における被選任者をして取締役あるいは監査役に就任せしめるには右選任決議のほかに代表取締役が右就任の申込をなし右選任者がこれに応じて承諾を与えることによつて成立するいわゆる就任契約ないしは任用契約の締結が必要であると解せられるから、株主総会における右選任決議と被選任者の右就任とは一応これを区別して考えることができ、従つて本件取締役および監査役に対する資格制限は株主総会における右選任決議の際の要件ではなくして単に右被選任者の就任の際の要件であるに止るものと解せられないこともないが、右の如く総会における取締役および監査役の選任決議によつて直ちにその被選任者がその地位に就任するものではなく別途その就任契約が必要であると解せられるのは右被選任者の意思を無視して一方的に重大な義務と責任とを伴う取締役、監査役の地位に就任させられることは適当でないとの考慮と株主総会が単に株式会社の意思決定機関たるにとどまりその業務執行機関ではないことによるものであつて、代表取締役の右就任申込も株主総会の右選任決議に全面的に拘束せられ、ただ単に会社の業務執行機関として右株主総会の選任決議の結果を機械的に執行するものであるに過ぎないから取締役および監査役の資格に対する制限を以つて単に右選任決議と区別された就任の際の要件であると解したとしても前記のとおり本件定款変更決議によつて被告会社株主の有する取締役および監査役の選任に関する議決権がその実質において制約を受けることには何んらかわりないものというべきである。そして以上のことは前記株主総会決議の社団的内部関係における本質からする当然の帰結であるというべきであるが、更にこれをその法人的外部関係における特質に徴すると、本件総会決議は独立の法人格の主体としての被告会社自身がその定款変更という形式によつて被告会社の取締役および監査役の資格につき日本国籍を有しない者を排除する旨決定したことを意味するものとも解せられるものである。

そうすると本件総会決議は一方において被告会社の株主がいわゆる株主権の一種として有する取締役および監査役の選任に関する議決権に対し制限を加えることを内容とするものであるとともに他方において被告会社がその監査役の資格について国籍の如何により差別的な取扱をすることを内容とするものであると解することができ、而してもし右総会決議が違法なものであるとすれば(もとより右総会決議が違法無効のものであるかどうかは本案の判断に属する事柄である。)それは原告を含む被告会社の株主が有する取締役および監査役の選任に関する議決権に対する違法な制限を課するものであるとともに被告会社自身がその取締役および監査役の資格につき外国人に対し違法な差別をするものであるといわざるをえないものである。してみれば原告は被告会社の株主として、右選任に関する議決権に対する制限を排除する意味において自己を含む株主全員の利益のため本件総会決議の違法を主張しその無効を対世的に確定せしめる法律上の正当な利益を有するとともに更に被告会社のなした右外国人に対する違法な差別的取扱を是正する意味において被告会社自身の利益のためその無効を対世的に確定せしめる法律上の正当な利益をも有するものということができる。

被告はこの点に関し、被告会社においては現在外国人に関する取締役あるいは監査役選任につき何んらの具体的紛争もないから本訴は会社の自治法規たる定款の規定が憲法、法律に適合するかどうかの抽象的な判断ないし法解釈を求める不適法な訴であると主張するが、前示のとおり商法第二五二条に規定する株主総会決議無効の訴は元来株主総会決議が株式会社という社団の団体的組織的法律関係の基礎となる事柄であるとともにたとえそれが無効のものであつても会社その他の関係人においてあたかもこれが適法に拘束力を有するかのように取扱われ勝ちであることに鑑み、その効力のないことを判決を以つて対世的に確定することが当該会社および株主、取締役等諸々の法律関係に立つ多数の者の権利関係の安定に寄与するところが大であることに基づいて設けられたものであり、従つてその訴訟上の請求(訴訟物)の法律的構成も一般民事訴訟上の通常の確認訴訟におけるものとは少しく異なり、株主総会決議の無効を前提とする現在の法律関係の確認(例えば取締役選任決議の無効を前提とする当該被選任者の取締役でないことの確認――もとよりかような確認訴訟も民事訴訟の一般原則による通常の確認訴訟として許されるところであるが、この訴訟における判決の既判力が右決議の無効である点については生じないし、また対世的効力のないことも前記のとおりである。)を訴訟物とするものではなくして、直接に当該株主総会決議が有効であるならば本来それが有するであろう効力の無効確認自体を訴訟物とし、その無効を判決によつて対世的に確定することを目的とするものと解せられるところ(尚最高裁判所昭和三八年八月八日判決、民集一七巻六号八二三頁参照)、本件決議は被告会社の「定款第一七条(役員の資格)取締役および監査役は日本国籍を有する者に限る。」を新設する。というものであるから、これは当然に被告会社の定款に記載されるところであつて会社その他の関係人においてこれが適法に拘束力を有するものとして取扱われることは明らかであるから、株主総会決議無効確認の訴の前記の特質からするとたとえ現在外国人の取締役あるいは監査役の選任につき具体的紛争がなくとも、原告は被告会社の株主として自己および被告会社を含むその関係人間において本件総会決議の拘束力のないことの画一的確定を計ることの法律上の利益は十分に肯定することができ、本件記録を精査しても他に原告の右利益を否定すべき事由も見い出し難いところである。してみれば原告は本訴請求につき確認の利益を有するというべきである。

二、そこで進んで本案について審及すると

(一)  およそ日本国憲法第三章以下の各条項において規定する国民の権利および自由、即ちいわゆる基本的人権は本来国家および公共団体に対する関係において一般国民に保障された権利であつて右各条項は国家および公共団体等の国家機関が立法、行政等の国政上で右基本的人権を侵害してはならない旨を規定しているものであり、それ故憲法第一四条の規定もまた右の国家機関が国政上で一般国民に対し不合理な差別的取扱をすることを禁止したものであるにとどまり、直接に私人相互間の法律関係における差別的取扱をも規律せんとするものではないことはその沿革および解釈上自明のことといわなければならない。而して私法上の法律関係であることが明らかな本件総会決議の内容が右憲法第一四条の規定により直接に無効とされることはその性質上ありえないものというべきであるから、原告の憲法違反の所論はそれ自体失当というべきである。

(二)  しかしもとより憲法は国家の最高法規であつて、法秩序全体を支配する根本規範である以上、日本国憲法が右の如く国民に対し諸々の基本的人権を保障し立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする旨明言していることはとりもなおさずこれらの基本的人権が侵害せられないことを以つて国家の法秩序全体を支配する最高の価値としたことを意味するものにほかならないから、私人相互間の法律関係といえども何んらの合理的理由のない不当な差別的取扱を内容とし、それが憲法第一四条の規定の精神に違背するに至るものであるときは、それはもはや私法的自治の原則の範囲を逸脱して民法第九〇条にいわゆる公の秩序、善良の風俗に違反する結果、無効とせられるに至ることは当然である。また他面商法第二五四条第二項は会社は定款を以つてするも取締役が株主たることを要する旨を定めることができないと規定し、同法二八〇条はこれを監査役にも準用しているところ、右規定は昭和二五年法律第一六七号により改正追加せられたものでその趣旨とするところは、右改正以前において取締役が大株主のみに限定されていた弊害を除去するとともに、いわゆる企業の所有と経営の分離を法律的にも承認し取締役および監査役を株主中から選任することを要しないものとして広く会社の具体的運営の任にあたる者に広く適材を求めんとするにあるものと解される。而して右規定は取締役および監査役の資格を株主に限定することを禁止するにとどまり、各株式会社においてその他これが資格要件を定款を以つて規定することの一切を禁止する趣旨をも含むものではなく、それは原則として各株式会社の自治に委ねられていることがらであると解せられ、ただその資格制限が法の精神に違背するとか、あるいは株式会社の本質に違反する等合理的根拠のないものであるときにはじめて前記のとおりその資格制限は株式会社自治の原則を逸脱し無効とせられるに至るものというべきである。

(三)  従つて結局のところ本件総会決議の有効無効の判断は専らその内容たる被告会社の取締役および監査役は日本国籍を有する者に限る旨の資格制限が右の意味において、私法的自治の原則ないし株式会社自治の原則を逸脱した合理的根拠のないもので、民法第九〇条に違反しているかどうかによつて決せられるものということができる。そして株主総会決議は株式会社における意思決定機関たる株主総会の意思決定たることをその本質とすることは前記のとおりであるところ、右株主総会決議の動機、目的は、もとより当該決議案を提出した代表取締役やあるいは株主総会において右決議案に賛成した多数株主等の右決議をなすに至つた動機目的とは全く別異の観念であるとともに、それを法律的に把握し、確定することは性質上不可能な事柄に属するものであるから、右総会決議自体の動機、目的が特にその決議の内容として明示せられている場合等の特段の事情がない限り、株主総会決議の内容自体には何んら法令又は定款違反の瑕疵がなく、単にその決議をなすに至つた動機、目的に公序良俗違反の不法があるにとどまる場合には、当該決議を無効たらしめるものではなく(最高裁判所昭和三五年一月一二日判決、商事法務研究第一六七号第一八頁参照)、即ち原則として株主総会決議についてはそれをなすに至つた動機、目的はその効力に対し何んらの影響を及ぼすものではないものと解するのが相当であり、従つて右の如き動機目的が特にその内容として明示せられていることの認められない本件総会決議の効力を検討するに当つては右決議の内容およびその効果を客観的に考察すれば足るものということができる。

(四)  そこで翻つて憲法第一四条の規定の趣旨についてみると、同条第一項は「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において差別されない。」旨規定しているところ、ここにいう国民とは日本国民を意味しまた人種とは国家の所属員たる資格を意味する国籍なる概念とは区別された人間の生物学的、人類学的な種別を意味するものであることは日本国憲法の規定自体において、基本的人権の保障される主体として「何人も」(憲法第一八条等)という用語と「すべて国民は」(同法第二五条等)という用語とを一応の基準にもとづいて使い分けていることよりすれば、その規定の文理上明らかであるというべく、従つて右法の下の平等を規定する憲法第一四条は直接には日本国民に対してこれを保障しているものと解するのが相当であるが、もとより右規定が外国人に対して法の下の平等の保障を否定している趣旨であるものと解すべきでないことは当然であつて、外国人に対しても、いわゆる参政権のようにその権利の性質上日本国民との間におのずから差別のあるものは別にしても、でき得る限り日本国民と同様の平等な取扱を尊重しこれを保障すべきことは近代法の予想するところであるとともに、いわゆる自然法と国際原理協調主義とをその基調としている日本国憲法もまたそれを当然要請しているものとみるべきであるが、現下の世界体制が未だ国家という単位を法的、経済的体制の基礎においている以上、外国人の当該国家に対する関係はその一般国民の国家に対する関係が全面的且つ恒久的な結合関係であるのとは本質的に相違し、専ら場所的居住関係をその重要な要素として成り立ついわば片面的関係とでもいうべきものであり、このことからしても、外国人に対しすべての面に亘つて一般国民と同等に取扱われるべきことを要請されているものとみることはできないとともにさらにまた私人相互の関係においては、外国人が一般国民からこれと同等に取扱われるべきことを国家が強行法的に実現し保障しているものとみることはできず、そこには国家が容認しえない私人相互の私法的自治の支配する領域の存在することも認めなければならないところであり、特に現在の国際経済社会も各国の国民経済を単位としそれを前提として営まれているものであるから、日本の各国内企業がその企業内における外国人の経済活動に対してある程度の制約を課することもまた各国内企業のそれぞれの自主的な判断に委ねられるべき事柄であることを承認しなければならず、ただそれが私法的自治の原則を逸脱した合理的根拠のないものであるときにはじめてそこに国家が介入してその私人が法的に無効とされるに至るものと解せられる。そしてかような観点に立つてみるとき、一般に各株式会社においてその取締役および監査役の資格につきこれを日本国籍を有する者に限る旨をその定款に規定した場合、それがいわゆる原始定款によるものであれば、これはいまだ当該株式会社の自主的な判断に委ねられる領域に属するものであつて私法的自治の原則ないし株式会社自治の原則を逸脱した不合理な外国人に対する差別的取扱であるとしてこれを無効とすることは相当ではないと解すべきである。

(五)  そこでつぎに本件の如く右資格制限を定款変更(新設)によつて規定する場合についてみると、株式会社は、いわゆる人的会社の典型形態である。

合名会社においてその各社員が会社債務につき直接連帯無限責任を負うとともに(商法第八〇条)その社員たるの地位にもとづき法律上当然に会社の意思決定、業務執行および会社代表機関たる地位につくのを本則とする(いわゆる自己機関――商法第七〇条)のとは異り、いわゆる物的会社の典型的形態として前記のとおりいわゆる企業の所有と経営の分離が法的にも承認され、株式会社の社員たる株主は会社の債務につき無責任であつてただ単に会社に対し一定限度の出資義務を負担するにとどまるとともに(いわゆる株主有限責任の原則――商法第二〇〇条第一項)その株主たる地位にもとづき法律上当然に会社の機関構成員となるのは会社運営の基礎的事項に関する意思決定機関たる株主総会(商法第二三〇条の二)のみであつて、会社の具体的業務執行に関する意思決定機関たる取締役会(商法第二六〇条)を構成する取締役、具体的な業務執行および会社代表機関たる代表取締役(同法第二六一条第一項)、会社の会計監査役(同法第二七三条以下)という各機関資格と株主資格との結合関係は法律上分割されているのみならず、右取締役および監査役の各資格と株主資格との結合関係を定款の規定を以つて要求することさえも禁止しているのである(いわゆる第三者機関――同法第二五四条第二項)。而して以上のとおりの株式会社における各機関構成の原理に徴すると、株式会社の社員たる株主はその地位にもとづきいわゆる株主権として利益配当請求権を中心とする自益権と株主総会における議決権等を中心として株式会社の運営に参加する共益権とを併わせ有するものであつて、前記のとおり株式会社の運営に関する基礎的事項は株主総会において各株主の有する議決権の行使を通じて決せられるが、その具体的な業務執行と会計監査とは専ら株主たる地位から強行法的に切り離されたいわゆる第三者機関たる取締役会、代表取締役および監査役に委ねられているものであるから、株主は法律上これら具体的な会社運営には直接参画せず、ただ株主総会における右取締役および監査役の選任、解任につき議決権の行使を通じていわば間接的、監督的立場においてこれに参画するに過ぎないものであつて、右選任、解任についての議決権はもとより株主権の内容をなす権利であるが、各株主が自ら取締役、監査役の地位につき、あるいは自己の欲する者をしてこれに就かしめることは単に株主総会における右選任の議決権行使を通じて得られる結果にすぎなく、これをその株主個人からみれば単なる可能性ないしは期待とでもいうべきものにすぎず、前記共益権のなかに株主自らあるいは自己の欲する第三者をして取締役あるいは監査役として具体的な会社運営に参画しまたは参画せしめる権利が含まれているとみることはできない。即ち右取締役および監査役への就任権あるいは被選任権とでもいうべきものは各株主が株主たるが故に有する固有の権利ではないものと解するのが相当である。

(六)  してみれば、本件総会決議の当時、被告会社の株主のなかに外国人がいても、本件定款変更決議の内容を以つて右外国人株主の株主権を侵害するものとみることはできず、そうであれば、およそ定款変更による外国人に対する取締役、監査役の資格制限は当該会社の外国人株主全員の同意を要するとか、あるいは外国人株主の有する株式の持株比率がいわゆる累積投票請求権(商法第二五六条ノ三、第二五六条ノ四)が認められる発行済株式総数の四分の一以上を占める場合にはその同意を要するとする見解、さらには株主総会の定款変更決議のほかにいわゆる種類株主総会に関する商法第三四五条の規定を類推適用し外国人株主の総会における特別決議を要するとする見解はいずれもそれを必要とする合理的根拠を見出し難く当裁判所の採用しないところである。

(七)  そうすると結局本件総会決議の内容は私法的自治の原則ないしは株式会社自治の原則の範囲内に属する事柄で公の秩序善良の風俗に反していないものと解するのを相当とし、他に法令または定款に違反する無効事由も見出し難いからその余の点につき判断するまでもなく原告の本訴請求は理由がないのでこれを棄却し、民事訴訟法第八九条により主文のとおり判決する。(小沢三郎 日高乙彦 太田雅利)

別表Ⅰ 国家による内外人差別例

分類

法令名

差別の内容

出入国・

在留

出入国管理令

有効な旅券・乗員手帳を所持していなければ入国できない(第三条、七〇条第一項)。上陸は、特別上陸(第一四、一八条)の場合を除くほか、一定の在留資格を有する者にのみ許可される(第四条、七〇条第四項)。在留を許可された外国人でも一定の事由の存する場合には、国外に強制的に退去せしめられる(第二四条)。

外国人登録法

わが国に在留する場合は、その居住地の市区町村長に申請して外国人登録を行なつたうえ、登録証明書の交付を受けることおよびこれを常に携帯することを義務づけられる(第一三、一八条)。その他、所定の登録義務が課せられている(第六、八?九、一一、一四?一五、一八?一九条)。

公職・

参政権

公職選挙法

外国人は、わが国の衆・参議院議員、地方公共団体の議会の議員および長に関する選挙権を有しない(第九、一〇条)。

地方自治法

外国人は、普通地方公共団体に対する直接請求権(条例の制定改廃・事務の監査、議会の解散、解職に関する請求権)を有しない(第一二、一三条)。

国家公務員法

「前項の規定は、政府又はその機関と外国人との間に個人的基礎においてなされる勤務の契約には適用されない」(第二条第七項)とあるため、一般的には外国人は公務員になれないと解されている。行政事例も「公権力の行使又は国家意思の形成への参画にたずさわる公務員となるためには、日本国籍を必要とする」としている(昭和二八年三月二五日法制局一発二九号法制局第一部長回答)。

人事院規則八- 一八

採用試験

次の各試験の受験資格者は、日本国籍を有する者に限られるほか◎印については、配偶者も日本国籍者であることが要件とされる(第九条)。

国家公務員採用上級甲種・乙種、中級、初級試験青少年矯正職員・保護観察職員採用甲種・乙種試験

◎外務公務員採用上級・中級試験

国立学校図書専門職員採用上級甲種・乙種、中級試験

労働基準監督官採用試験

◎外務省語学研修員採用試験

航空営制官採用試験

皇宮護衛官採用試験

刑務官採用試験

入国警備官採用試験

海上保安学校・大学学生採用試験

人事院規則一- 七

政府又はその機関と外国人との間の勤務の契約

国家公務員法第二条第七項により例外的に外国人の雇用される「個人的基礎においてなされる勤務の契約」とは、当該職務に合う者を日本国籍者中より得ることが不可能か、極めて困難な場合等に限つて認められる。

外務公務員法

政令で定める場合のほか、日本国籍を有しない者、外国の国籍を有する者、またはこれらを配偶者とする者は外務公務員となることが出来ず、途中でもしそうなれば当然失職する(第七条その他第二五条参照)。

(なお同法施行令により本法で「政令で定める場合」とは、外務公務員が国籍を有しない者、外国の国籍を有する者と婚姻した場合、当該婚姻の日より一年を経過するまでをいう(期間満了までに配偶者が日本国籍を取得していなければ当然失職する)(第一条))。

国立総合大学・官立大学・高等師範学校及文部省直轄諸学校雇外国人に関する件

国立総合大学、官立大学、高等師範学校、文部省直轄諸学校において外国人を教官として任命するためには、文部大臣の許可を必要とする。

陪審法

陪審員は帝国臣氏たる三〇才以上の男子であることが要件とされる(第一二条ただし本法は「陪審法の停止に関する法律」により現在施行停止)

防衛大学校規則

同大学校の受験資格として、日本国籍を有し志操健全で身体強健な男子とされる(第一条)。

自衛隊生徒の任用に関する訓令

同生徒の受験資格として、日本国籍を有する男子とされる(第五条)。

二等陸士・二等海士及び二等空士たる自衛官の募集及び採用に関する訓令

二等陸士・海士・空士の応募資格として、日本国籍を有する男子とされる(第八条)。

政治資金規制法

わが国の政党、協会その他の団体・支部は選挙に関し、外国人外国法人および外国の団体から寄附を受けることを禁止される(第二二条第一項、第二六条)。

職業・

事業・

社会活動

出入国管理令

わが国への入国・在留が許される外国人は以下の職業・社会活動を行なう者に限られる(第四条第一項)。

外交官等、興業関係者、貿易関係者、交化活動者、技術熟練労働者

公証人法

公証人に任ぜられるには、日本国民にして成年者たることが要件とされる(第一二条第一号)。

水先法

日本国民でない者は水先人となる資格がない(第五条第一号)。

弁理士法

通商産業大臣が定める特定の外国人〔日本国民に対して相互主義をとる国の国民(「弁理士法第二条第一項第一号に定める外国の国籍を有する者に関する省令」による)〕以外の外国人はわが国の弁理士となる資格がない(第二条第一項)。

移民保護法

帝国臣氏、帝国民民のみを株主とする会社で帝国に主たる営業所を有するものでなければ移民取扱人となることができない(第七条の一第一項)。

電波法

・日本国籍を有しない人、外国政府またはその代表者、外国法人 または団体、法人または団体で前記の者が代表者であるもの、または前記の者が役員の三分の一以上もしくは議決権の三分の一以上を占めるものは、わが国の一般無線局開設の免許享有資格がない(第五条第一項)。

・日本国籍を有しない人、外国政府またはその代表者、外国法人または団体、法人または団体で前記の者が業務を執行する役員であるもの、または前記の者が議決権の五分の一以上を占め外国性を有するものは、わが国における放送無線局の免許を受ける資格がない(第五条第四項)。

船舶法

外国船舶は、主務大臣(運輸大臣)の許可ある場合を除き日本各港の間において物品・旅客の運送業に従事できない(第三、二三条)。

航空法

外国国籍を有する航空機は、国内での使用、軍需品の輸送、国内での有価航空運送に供することを原則として禁じられる(ただし、運輸大臣の許可を受けた場合はよい)(第一二七、一二八、一三〇条)。

海上運送法

日本人が外国人に船舶を譲渡・貸渡するには、運輸大臣の許可を要する。その他海上運送事業を営む外国人に対しては本法の規定(ただし第二八?三一条を除く)が適用されない(第四二条の三、第四四条の三)。

銀行法

外国銀行については、主務大臣が免許を与える際必要な制限を付することができる(第三二条)。これを受けて「銀行法第三十二条ノ規定ニ依ル銀行ノ特例ニ関スル件」は外国銀行が国内に営業所を設けて銀行業を営むためには営業所毎に一〇万円に相当する金額の国債または大蔵大臣の認可を受けた有価証券を供託することを要求している(第二条)。

職業・

事業・

社会活動(続)

外国保険事業者に関する法律

外国保険事業者が日本で事業を行なうにつき種々の制限が課せられる〔例 一千万円の金銭を供託すること(第八条第一項)など〕。

外国人漁業の規制に関する法律

日本国籍を有しない者(適法に本邦に在留する者で農林大臣の規定するものを除く)は本邦水域内で漁業を行なえない(第三条)。

外国人の行なう漁業等の取締りに関する省令

外国人(適法に本邦に在留する者を除く)は本邦水域に属する水面において漁業を行なえない(第一条)。漁獲物の本邦への陸揚げも原則として禁止される(第二条)。

昭和四二年六月六日付閣議決定―当面の自由化措置(同年七月一日より実施)

第一種自由化業種における自動認可の要件として新設会社の取締役・代表取締役のうち、日本側株主によつて選出される日本人の占める割合が日本側株主の持株比率以上(したがつて過半数以上)であることが要求されている。

財産権

外国人土地法

外国人の日本における土地に関する権利の享有につき相互主義をとる(第一条)、また国防上必要な地区については政令で外国人の権利取得につき制限・禁止できる(第四条)。

外国人の財産取得に関する政令

外国人が日本人または主務大臣の指定する外国人から次のごとき権利を取得するためには、主務大臣の認可を受けることを要する(第三条)。

一、土地・建物・工場・事業場もしくはこれらに附随する設備、鉱業権もしくはこれに関する権利

二、これらの財産の賃借およびその他の物権

三、特許権その他の工業所有権

鉱業法

外国人は鉱業権・租鉱権を享有しえない(第一七、八七条)。

船舶法

外国人・外国法人は日本国籍の船舶を所有しえない(第一条)。

航空法

外国人は日本国籍の航空機を所有しえない(第四条)。

帝国鉱業開発株式会社法

政府、公共団体、帝国臣氏、帝国法人以外の者は株式を取得できない(第四条)。

東北開発株式会社法

政府、公共団体、日本国民、日本法人でその株主・役員の半数以上あるいは資本の半額以上もしくは議決権の過半数が外国人または外国法人に属さない者でなければ、株式を取得できない(第四条)。

国際電信電話株式会社法

同右(第四条第一項)

日本航空株式会社法

日本国籍を有しない人が議決権の三分の一以上を占めることがないよう株式の譲渡制限が可能(昭四一年の商法改正以前より)(第二条)。

特許法

外国人は、日本国に住所・営業所を有しない場合、特許権を享有しえない(第二五条)。〔特許庁長官は外国人の手続につき必要と認めるときはその国籍を証する書面などの提出を命ずることができる(特許法施行規則第七条)。申請人が外国人であるときはその国籍を証明する書面を添付する(特許登録令第三〇条)〕

実用新案法

特許法第二五条を準用(第五五条第三項)。〔特許法施行規則第七条を準用(実用新案法施行規則第六条)。特許登録令第三〇条を準用(実用新案登録令第七条)〕

意匠法

特許法第二五条を準用(第六八条第三項)〔特許法施行規則第七条を準用(意匠法施行規則第一一条)。特許登録令第三〇条を準用(意匠登録令第七条)〕

商標法

特許法第二五条を準用(第七七条第三項)。〔特許法施行規則第七条を準用(商標法施行規則第六条)。特許登録令第三〇条を準用(商標登録令第八条)〕

著作権法

外国人は条約に別段の定めある場合のほか、日本で始めて発行された著作物に限り権利を保護される(第二八条)。(日本人の場合は、著作物が発行されたと否とにかかわらず、またいずれの国で発行されようと権利を保護される)。

ただしベルヌ条約、万国著作権条約等により実際には外国人にも内国民待遇が与えられる例が多い。

外資に関する法律

外国資本家が日本において技術援助の契約を締結・更新し、または日本法人の株式、持分、社債、貸付金債権を取得するためには主務大臣(大蔵大臣)の認可を要する(第一〇?一三条)。

昭和四二年六月六日付閣議決定―当面の自由化措置(同年七月一日より実施)―

第一種自由化業種の場合において、新設会社の日本側株主でその会社と同一の事業を営むものの所有株式数の合計が、その会社の総発行株式数の半分以上を占めること、かつその同一の事業を営む日本側株主のうちに、一株主で総発行株式数の三分の一以上の株式を所有する者があることが要求される。

企業援助

三国間輸送助成金交付規則

国は日本船舶による三国間輸送の助成のために三国間輸送助成金を交付するが、その交付の申請資格者は日本船舶を所有することができる者(=外国人は含まれない)に限られる(第三条)。

外航船舶建造融資利子補給及び損失補償法、同施行令

船会社が外航船舶の建造を日本の造船会社等に請負わせる場合において、金融機関がその資金を融通するときは、政府はその融資につき利子補給金を支給し、または損失補償を行なう旨の契約を当該金融機関と結ぶことができる(第二条)。

日本開発銀行に関する外航船建造融資利子補給臨時措置法

同右について、日本開発銀行がその資金を融通する場合について、同旨の規定を置く(第一条)。

臨時船質等改善助成利子補給法

同右について、日本船舶たる低性能船舶の所有者でその船舶を運輸省令で定めるところにより解撤し、または解撤のために処分するものが請負わせる場合について同旨の規定を置く(第二条)。

外国人等の国際運輸業に係る所得に対する所得税等の非課税に関する法律

外国人の国際運輸業にかかる所得については、相互主義を条件として所得税・法人税を課さない(第一条)。

生活援助

児童扶養手当法

当該児童が日本国民でないとき、または日本国内に住所を有しないときは、その児童につき児童扶養手当を支給しない(第四条第二、三項)。

特別児童扶養手当法

当該児童が日本国民でないとき、または日本国内に住所を有しないときは、その児童につき特別児童扶養手当を支給しない。また父母・養育者に対する手当は、当該父母・養育者が日本国民でないときまたは日本国内に住所を有しないときは支給しない(第四条)。

国民年金法

被保険者は日本国内に住所を有する二〇?六〇才の日本国民に限られ、日本国民でなくなつたときはその資格を失う(第七?九条)。〔国民年金には、老令年金・通算老令年金・障害年金・母子年金・準母子年金・遺児年金・寡婦年金・死亡一時金(以上拠出制)および老令福祉年金・障害福祉年金・母子福祉年金・準母子福祉年金(以上無拠出制)が含まれる〕。

国民健康保険法施行規則

国民健保険法第六条(適用除外)第八号に規定する「厚生省令で定める者」として「日本国籍を有しない者」が挙げられているため外国人は国民健康保険の被保険者となりえない(ただし、条約で日本人に内国民待遇を与えている国の外国人等は除く)(第一条)。

未帰還者留守家族等援護法

本法によりその留守家族が手当の支給を受ける「未帰還者」とは、日本国籍を有する者に限られる(第二条)。

未帰還者に関する特別措置法

本法により、とくに未帰還者とみなされてその遺族が弔慰料の支給を受けるはずの者であつても、日本国籍を有しない者はこの限りでない(第一三条の二)。

戦傷病者特別援護法

日本国籍を有しない者は、本法による援護を受ける前提である戦傷病者手帳の交付を受けられない(第四条)。

生活援助(続)

戦傷病者戦没者遺族等援助法

不具疾病の状態になつた日において日本国籍を有しないか、またはその日以後昭和三三年一二月三一日以前に日本国籍を失つた者に対しては本法による障害年金・一時金を支給しない(第一一条)。

戦傷病者等の妻に対する特別給付金支給法

本法による特別給付金は昭和三八年四月一日現在戦傷病者等の妻であつて、かつ日本国籍を有していた者に対してのみ与えられる(しかも四一年四月一日以前に日本国籍を失つた者は資格がない)(第三条)。

戦没者遺族旅客運賃割引規則

本規則により靖国神社への参拝につき割引を受ける「遺族」とは戦没者死亡当時日本国籍を有していた者に限られる(第二条)。

戦没者等の遺族に対する特別弔慰金支給法

本法により特別弔慰金の支給を受ける「戦没者の遺族」とは、昭和四〇年四月一日現在日本国籍を有している者に限られる(第二条)。

引揚者給付金等支給法

本法による引揚者給付金、遺族給付金は日本国籍者に対してのみ本給される(第四、八条)。

引揚者等に対する特別交付金の支給に関する法律

本法による特別交付金の支給を受ける資格があるのは引揚者・その遺族で、かつ日本国籍者に限られる(第三条)。

国家賠償法

被害者が外国人である場合には、相互の保証があるときに限つて国家に対する賠償請求権が認められる(第六条)。

連合国占領軍等の行為等による被害者等に対する給付金の支給に関する法律

連合国占領車の行為により負傷し、または疾病にかかつた者、死亡した者の遺族に対して本法により支給される給付金は、本法施行日においてその者が日本国籍者である場合に限られる(第三条)。

特殊海事損害の賠償の請求に関する特別措置法

本法は特殊海事損害(=日本行政協定第一八条第五項の規定により同項の他の規定の適用を受けない損害)を蒙つた日本国民・日本国法人で、その損害の賠償を請求するものに対して、あつせんその他必要な援助を行なう(第一条)。

その他

民法

外国法人は国、国の行政区画、商事会社を除くほか成立を認許されない(ただし法律・条約により認許されたものはこの限りでない)(第三六条第一項)。

恩給法

日本国籍を失つたときは、公務員・その遺族の年金・恩給受給権は消滅する(第九条第二号)〔なお、受給者が国籍を失うなど恩給受給権を喪失した場合には、縁故者よりその旨速かに裁定庁に通知することが義務づけられている(恩給給与規則第三二条)〕。

非訴事件手続法

外国に関する非訟事件手続であつて条約により特に定めることを要するものは司法大臣がこれを定める(第二〇九条の二)(具体的には「外国人の遺産の保存処分に関する手続」が存するのみである)。

財産税法

昭和二一年三月三日午前零時現在本法施行地に住所または一年以上居所を有した者等は、その有する財産につき財産税を納める義務を負うが、とくに命令で定める外国人(財産税法施行規則第一条により殆んどの国がこれに含まれる)にはこれを課さない(第二条)。

位階令

栄典制度につき、有位者が国籍を喪失したときはその位を失うとされる(第九条)。

別表Ⅱ 私人による社会生活上の外国差別例

分類

名称

差別の内容

スポーツ

全国青年大会要領

日本国籍を持たない者は本大会の参加資格がない。

国民体育大会開催基準要領

同右

住宅

住宅金融公庫例規集

外国国籍を持つ者、二重国籍者、無国籍者、外国

法人に対しては融資しない(昭和三〇、二、一六住公発第一八二号副総裁通ちよう)。

住宅公団申込案内書

日本国籍を持たない者は、入居申込資格がない。

愛知県住宅供給公社

分譲住宅申込案内書

日本国籍を持たない者(二重国籍を含む)は分譲住宅譲受の申込資格がない。

融資

国民金融公庫代理業務事務取扱要領

第三国人は公庫法第一条の「国民大衆」の解釈上貸付対象とは認められない。

留学生

フルブライト研究員・

留学生募集要領

日本国籍を有しない者は、応募資格がない。

フインランド政府奨学金

留学生募集について

日本人で、かつ二重国籍を持たないことが応募資格とされている。

チェコスロヴァキア政府

奨学金留学生募集

同右

奨学金

日本育英会奨学規程

日本国民でなければ奨学生の資格がない。

定款

大阪セメント株式会社定款

取締役及び監査役は成年の日本人中から株主総

会でこれを選任する(第一五条)。

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